flavor of shadows

土曜日、終電を逃してしまい歩いて帰ることにした。初めて通る道ばかりで、どの道を歩いても人通りがなく、ずっと遠くの方まで見渡せるような透明感があった。

1時間ほど歩いてコンビニに立ち寄り、温かいコーヒーを手に外で休憩する。コーヒーを飲み込んだ吐息は、駐車場に射すコンビニの蛍光灯がぼんやりと白く揺らしてみせた。両耳は外気を受けてジンジンと痛み、左手の薬指の爪は割れてしまった。

アスファルトに映る自分の影を見つめていた。形をもった光が影だとすると、西洋のお化けに影がないのは、あるがままそこにある光源や実体が、どちらか一方を失うだけで影も形も失くしてしまうからなのか、実体が心の有様だとしたら身に覚えがあった。

相変わらず、目が覚めて16時間かけて眠る準備を始めるような日もあるので、影が薄くなるという慣用句から連想するものと結局同じものを見ているような気がする。帰宅したのは深夜3時を過ぎていて、寝支度を整えて冷たいベットにもぐりこんだ。ときどき、一緒に過ごした人たちのことを思い出す。指先は冷たくて、手をつないでほしいのは決まってもう会えないときだったりする。

・まっくらだからあかるいね
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