一瞬だけの永遠を語れたなら

ときおり、空に飛行機雲をみた。ある日、青い空に飛行機雲と白い月が重なっていて、昼が明るい夜なのだとしたら、こういう景色なのかもしれないと思った。

ベランダに置いていたサンダルに小さな枯れ葉がくっついていて、手に取ったそれは可愛い抜け殻のようだった。私は冬のことが好きだ。思い出がはく息はいつも白くて、その息に触れた影は歳を重ねるごとにかすれていった。

今年に入って三度目の風邪を引いた。もうろうとしながら風邪薬を飲んで、数日のあいだひたすら眠りつづけた。いい匂いがした。優しくて何もかもを包みこんでくれるような、優しい匂いだった。目を覚ますと夢を見ていた感覚だけが残った。何ひとつ覚えていない夢なのに、そんな過去を私は知っている気がした。

空気を入れ替えるために窓を開けると、ベランダにあった枯れ葉たちはどこかに消えていた。ほんとうに、数日前にはそこにあったのに。