そんなことないのに

公共の場で、子供同士のいじめを演出し、通りがかった大人たちの反応を観察するという動画に触れて。なにも知らされていない大人たちは被害者役の子供を助け、加害者役の子供を感情的に、理性的に、道徳観を問いつめていた。

撮影スタッフによって社会実験である旨が伝えられ、大人へのインタビューまでを1サイクルに、くり返しくり返し撮影はつづけられた。加害者役を演じている子供はうつむいて、次第に目にみえて傷つき、憔悴していった。

脚本家は『あなたはひとりじゃない』という表現のために、犠牲を必要とする道を選んでいた。コメント欄に目を移すと、止めに入った大人たちへの称賛にあふれ、それは『あなたはひとり』というまるで真逆の言葉として投げかけているようだった。その子の顔をみて、ちょっとね、我慢できないぐらい傷ついてしまった。