2022-01-01から1年間の記事一覧

自画像

このブログを作ってもうすぐ10年になる。親しい友人に対しても弱音を出すのが嫌いで、学生だった頃も、社会人になってからも、限界に近づきそうになるとここに逃げてきては泣き言を書いていた。数記事書いては数年放置して、また我慢できなくなるとここに戻…

冷たい頬のままでおいでよ

夜をください、そうでなければ永遠に冷たい洗濯物をください 服部真里子 『遠くの敵や硝子を』 生まれて初めて歌集が一冊、本棚に並んだ。手に取った表紙の帯に上述の一首が印刷されていて、表紙をしばらく開けなくなった。 夜は以前まで眠りの予兆だった。…

どこにでもあって、どこにもない

求めるものは物語や理由で埋め尽くされていて、その良し悪しに関わらずそれを求めずにはいられない。因果関係を作り出しては、勝手に不快になったり幸福になったりしている。 数年前、もし全自動の車ができたとしても、誰も乗りたがらないだろうという話をど…

結んで、解いて

11/23 水曜日、風もなく雨だった。部屋の窓から見える森林公園は、日に日に黄色や赤色を重ね、空を舞うカラスたちがいて、夕陽は毎晩そこに沈んでいった。 眠れない夜から覚めるのはだいたいお昼ごろで、低気圧の日は頭痛が加わって消化していくだけの日と出…

病める時も、健やかなる時も

睡眠薬を飲んでも眠れない日がつづいている。目蓋を閉じることは「ありもしない日常」を夢想することだった。数年前、年末に両親の墓に花を添えるために帰省した。大晦日、ビジネスホテルの一室でひとり過ごした窓の向こうに見えた繁華街は、この世で最も遠…

眠りから覚めるために

夜、お風呂上がりにベランダの窓を開けて夜風に当たることが日課になった。窓を開けている間、月がちょうどよく見える時間帯を知った。きっかけは、先週お酒に飲まれに飲まれて酩酊しながら、虚ろな視線を夜空に向けつづけていたから。どれだけ欠けていても…

落ちた空

喪失のあとに誇らしく獲得を語る歌が嫌いで嫌いで仕方がなかった。かけがえのないと語る一方で、その関係性によっていかに自分が何を獲得したのか、かけがえがないとされるそれすら失ってもまだ獲得のほうが大事なのか私にはどうしても分からなかった。そん…

おやすみなさい

2022/10/4自宅への帰路の途中、乗り込んだ電車内で運転見合わせのアナウンスが繰り返し流れていた。お急ぎのところ、申し訳ございません。お急ぎのところ、申し訳ございません。 運転再開の知らせと共に徐行しながら隣駅へと停車する。すでに車内は満員状態…

暖かいところで眠るんだよ

郵便ポストを開けてみると迷子になった猫のチラシが入っていた。添えられた写真には、白い毛並みの子猫が窓際に置かれたクッションの上で、夕日を背にカメラを見つめていた。 仕事を終え、家路をたどる頃には辺りは真っ暗になっていた。陽が落ちた途端に人の…

座礁した船で星を見つづけた

心療内科への定期通院はきょうで最後になった。通院のたびに履いていたお気に入りの白いスニーカーは気温が暖かくなってきて、アディダスからコンバースのローカットに変えた。ジーンズをロールアップしてくるぶしを出した。いまの季節にはまだ早いかもと思…

羽化するだし巻き卵

復職して2週間が過ぎた。いつの間にか桜が咲いて、いつの間にか名残になって、知らない間にアスファルトを滲ませていた。息を止めるような覚悟で迎えた復職の日々、いまは何のイベントもなく拍子抜けするほど淡々と時計の針を動かしつづけている。お弁当を会…

『どうせなにもみえない』

一見して写真と見間違うほどの超写実的な絵画は、乱暴な言い方をするとデジタルカメラのシャッターボタン一つで代替可能に見えた。2020年、渋谷のBunkamuraで開催された「超写実絵画の襲来」という展覧会に出かけたことがある。公式サイトやパンフレットに掲…

まるで別の世界の住人

けっきょく、寒すぎてエントランスの開放スペースは利用しなくなった。自分から体調を壊しにでかけているような気がしてきた。かといって、行く場所なんてどこにもない。終日、図書館や共有スペースの利用を前提にした復職のプランはコロナ禍や近隣のロケー…

居場所を求めて浮遊する人

産業医との面談を経て、少しずつ復職に向けて準備を始めることになった。 具体的には、自宅を離れて、ある程度静かな空間の中に身を置いて、就業時間と同じ時間を過ごすことに馴れていくことが重要なんだとか。図書館の利用をおすすめされ、本が読み放題なら…

手のひらに残ったのはこれだけ

睡眠薬を服用するようになって、アルコールは一番縁遠いものになった。昨年から冷蔵庫に転がったままのワインが2本ある。もともと私はひどい冷え性で、平熱も平均値より低くい値で生活している。人は眠ると代謝が低下し、睡眠が深くなるにつれて平熱から1℃程…

極まった夜が予兆するもの

普段ほとんど夢を覚えていない。寝ているときに見る夢のほう。人は眠っているとき、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)を90分周期で繰り返すらしい。レム睡眠で夢を見て、ノンレム睡眠ですべてを忘れてしまうそうだ。休職したことと睡眠薬を飲…

病める時も健やかなる時も

映画「心と体と」公式サイト 昨日の夜、映画「心と体と」を視聴した。 食肉処理場を舞台に、産休に入った検査官の代理職員として主人公の女性マーリアが赴任する。彼女は人とのコミュニケーションが苦手で、冒頭から孤立していく。周囲も気を使い、彼女と同…

日曜日のゾンビ

家庭菜園を始めたい。花でも野菜でも、なんでもいい。 動物を飼いたい。でもその子が死んだ未来を想像すると耐えられない。その子よりも長く生きている自分も想像できない。 天気の晴れた午前中、ソファーに盛大にコーヒーをこぼした。シーツで覆っていたこ…

ウァリー・ノイツェルという名の光

エゴン・シーレが好きだ。もともとは坂崎乙郎さんの著書「エゴン・シーレ 二重の自画像」を学生時代に読んでから。先に言うと私は美術全般にまったく明るくない。 現在手元に残っているのは「エゴン・シーレ 二重の自画像」「エゴン・シーレ:ドローイング水…

次のページを託され飛び立った祈りたち

あの時の小さな私を救えるのは私しかいない。今も尚、あの時の自分をどうやったら救えるか考える。幼かった私へ。あの時、してほしかったことは何? umikyou.hatenablog.com 幼いころ「空想したことは、真逆の現実を手繰り寄せる」というジンクスを胸の中に…

あの星空は遠く

先日、久しぶりに二日酔いになるほどお店でお酒を飲んだ。 もともと強い方ではないのだけど、ビールが喉に心地よくて、どんどんグラスを開けてしまった。なんとなく飲み足りなくて自宅への帰り道にコンビニで梨の缶酎ハイを一本買って帰ることにした。お酒を…

陽がさすどんな場所にも背骨が見えた

もう何回目になるだろう。気持ちの整理が苦手で、少しでも感情の輪郭を捉えたくて、拙い文字でなぞっています。たいてい衝動的にすべての記事を消してしまうけど。