羽化するだし巻き卵

復職して2週間が過ぎた。いつの間にか桜が咲いて、いつの間にか名残になって、知らない間にアスファルトを滲ませていた。息を止めるような覚悟で迎えた復職の日々、いまは何のイベントもなく拍子抜けするほど淡々と時計の針を動かしつづけている。お弁当を会社にもっていくようになった。なんとなく始めた生活の変化は帰宅した後の行動をルーティング化させて、今では効率化を考えるようになってきた。お昼ご飯を食べたあとの「あーおいしかった」が小さな幸せ。

復職と同時にだし巻き卵をひたすら練習していた。お弁当と言えばだし巻き卵。けれど、私はだし巻き卵を作ったことがなかった。料理もネットで拾ってきたレシピ通りにしか作れない。目分量、適量ワードは鬼門にある。

なんとなく試行錯誤したくてネット検索を封印した。記憶に残っている味覚の残像。毎日、うまい棒の比で猛烈に喉が渇くなにかのレシピだけが蓄積していった。ある日、「お砂糖」と「ほんだし」で作り、一口食べてみた、「そのときuninst、閃光が走る...!」だった。完全に私好みの至高の味付けを発見。以来、平日の12時から13時のどこかで、だし巻き卵様は私のほっぺたを幸せにしてくれている。