居場所を求めて浮遊する人

産業医との面談を経て、少しずつ復職に向けて準備を始めることになった。 具体的には、自宅を離れて、ある程度静かな空間の中に身を置いて、就業時間と同じ時間を過ごすことに馴れていくことが重要なんだとか。図書館の利用をおすすめされ、本が読み放題なら願ったり叶ったりだ!と思った。自宅での療養に軸足を置いていた段階からはもう卒業だ。個人的な感覚で言えば、不安はあるけれど、今すぐ職場復帰してもやっていけるような自信もある。いや、あるような気がしないでもない。そういう訳で、図書館に出かけたのだけれど、窓口で説明してくれた司書さん曰く、現在はコロナ禍の影響で、どの図書館も長時間の利用を制限しているそうで、私が行った図書館も例にもれず上限2時間までなんですよと、やんわり説明されてしまった。

手元のスマホで調べてみても、費用がかからず、長時間滞在できるような場所はそんなに多くないことを今更知ることになった。18時まで身を置く場所を求めて寒空の下、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり彷徨うことになったわけで、ワークスペースとして有料で提供されているカフェや個室なんかは見かけるけれど、1時間当たりの料金も8時間で見積もると馬鹿にできない金額になる。歩き回っている内に、近所のオフィスビルのエントランスを思い出す。机や椅子がたくさん置かれていて、たしか地域住民にも開放されていたはずだった。顔見知りと顔を合わせてしまう可能性があるけれど、足を向けてみることにした。記憶にあった通り、いまも椅子や机が設置されていて、利用できる時間も特に制限は設けられていないようだった。

この記事を書いているのもそこなのだけれど、オフィスビルで人の出入りがある1階エントランスの共用スペースの一区画でしかないので、外気の冷たさがだんだん体温を奪っていく。寒い...寒すぎる。1時間ほどで指先から感覚が無くなってしまった。用意されている椅子も、数時間も居座るような人を前提に設計されてはいないので、だんたんお尻も痛くなっていく。環境面だけで言えば休職前の職場よりも今のほうがひどい。別の意味で体調を壊してしまいそうで心配になる。
あー、ひざ掛けとか持ってくればよかった...

九州では桜が咲いたらしい。関東は例年3月の下旬から開花時期を迎えるそうな。私が住む街にはいつ桜が咲くのだろう。今年もお花見はきっと無理だろう。桜の下でゆっくり散歩したいな。